Ethical Consumer Magazine誌に掲載されているEthical Investment Research Service社によるレポートでは、大手金融機関毎の投融資態度の違いが示されている。そして、現在最も評価が高いのはCooperative Bankと幾つかの互助的に運営されている住宅金融組合*2である。
環境倫理に配慮した預金と投資
Cooperative Bankは、ある種の企業とは取引をしないと言う独自の方針を持っており、その旨を倫理綱領で明確に示している。相互扶助的に運営されている住宅金融組合の多く(Coventry、Yorkshire、Portman、Leeds & Holbeckなど)では、営利企業への融資は行わず、個人のみに融資を行うので、預金を通じて無節操な営利活動に協力してしまう心配は無い。Ecology住宅金融組合では、集まった預金を環境関連の施設や事業に投融資する。対象事業の例は同組合のウェブサイトで公開されており、例えばCATとも関係の深いUndergrowth住宅協同組合が含まれている。Undergrowthは得た資金の用途を、サステナブルな生活の為の実用技術を取り入れた共同住宅案件としている。Shared Interest Societyと言う組合組織の融資機関もある。国際的フェアトレード推進機関の一翼を担い、第三世界の生産者達との公正な取引に対して融資を行っている。
大手金融機関の中には、他にも社会倫理に配慮した預金商品を要している所がある。Triodos銀行は、社会或いは環境保護の観点で有意義な事業や企業のみに融資を行う。再生可能エネルギー、公共性のある共同住宅、フェアトレード、無農薬農業と食料品などがその対象である。同行は個人向けの融資は行っていないものの、様々な預金商品を用意し、預金者が資金の用途を選択できる様にしている。例えば、「地球を守れ預金」(Earth Saver Account)で集まった資金は、専ら再生可能エネルギーと省エネルギープロジェクトに融資される。この商品はFriends of the Earthとの提携で運用される。他の預金商品も、Soil Association(土壌協会/意訳:農業改善協会)、Churches National Housing Coalition(居住環境改善教会連盟)、Friends of the Western Buddhist Order(西洋仏教団体連盟)、Quaker Housing(クエーカー住宅基金)との提携によって運用されているので、預金者は資金の投入先を選ぶ事ができる。
Credit Unions(信用組合)*3
自分の預金が地元の為に使われる事を望むならCredit Unionsの活動に参加するのが良い方法である。Credit Unionsとは、組合員によって組合員の為に相互扶助によって運用される非営利の金融機関である。組合員の間に、例えば同一の地域に住んでいる或いは働いていると言う、共通の目的或いは連帯意識があるのが特徴である。非営利の機関なので、貸付から得られた利子は組合員に配当され、預金は銀行や住宅金融組合への預金と同じ様に保護される。
Credit Unionsは世界80箇国以上で1億人以上の組合員を擁している。アイルランドでは人口の半分が組合員となっており、多くの町で大手銀行の支店が閉鎖に追い込まれる事態も生じている。Credit Unionsは、手頃な条件で融資を受ける機会や、在来の金融機関との取引を望まない人に預金先の選択肢を与える存在なのである。
英国では、現在、一人5000ポンド(100万〜120万円)までをCredit Unionsに預金できる。利息の代わりに、年末に配当金が支払われる。この額は預金額に応じて決まるもので、現在の上限は8パーセントとなっている。将来はCredit Unionsも様々な預金商品を取り揃え、商品の内容によって配当金が異なっても構わない様になる事が望まれる。Credit Unionの預金の特典は無料の生命保険であり、本人死亡の際に預金額と同額の保険金が受取人に支払われる。
預金はいつでも引き出す事ができるが、組合側は引出の代わりに貸付を勧める場合が多い。そうする事で、融資を受ける資格を将来に渡って確保し、配当も受け続け、同時に生命保険も変わらず有効になるからである。Credit Unionsから融資を受けるのは簡単で、かつ経済的である。法令により、利息の変動は一ヶ月1パーセント(年率12.68パーセント)以内と定められており、通常の変動幅はこれより小さい。融資に関するルールは、競合する銀行ローンよりも極めて単純明快である。隠れたコスト、や繰り上げ返済の手数料はない。多くの場合、無料で生命保険が付いているので、本人死亡の場合でも家族が債務を負う必要はない。返済計画も柔軟に立てる事ができる。それこそが、Credit Unionsの融資制度が多くの人々にとってより良い選択肢となる理由である。
相談先等
CATの研修コースThe Economics of Sustainabilityでは経済理論によるサステナブルな地域社会の運営を取り扱っている。相互扶助活動、フェアトレード、公益団体、地域通貨制度などについて学ぶ。Tel: 01654 705981; www.cat.org.uk/courses
Ethical Consumer Research Association 倫理的消費経済研究協会
Tel: 0161 226 2929
Web: www.ethicalconsumer.org
隔月刊Ethical Consumer誌は環境倫理に則った消費行動の情報源。
Ethical Investment Research Service 倫理的投資研究サービス
Tel: 020 7840 5700; Web: www.eiris.org
環境倫理に配慮したい投資家向けに共同体活動の情報を提供する独立研究機関。
Co-operative Bank Co-operative銀行
Tel: 08457 212 212
Web: www.co-operativebank.co.uk
倫理綱領で取引相手を明確に定めている。
Triodos Bank Triodos銀行
Tel: 0117 973 9339
Web: www.triodos.co.uk
融資先を、生可能エネルギー、公共性のある共同住宅、フェアトレード、健康増進、無農薬農業と食料品など、社会及び環境保護の面で有意義な事業や機関に限っている。発展途上国向けに無担保小口融資も行っている。
Ecology Building Society Ecology住宅金融組合
Tel: 0845 674 5566; www.ecology.co.uk
環境に配慮した新築、荒廃地区や路上生活者向け施設の更新、森林保護、オーガニック食肉生産が対象融資先。
Association of British Credit Unions 英国Credit Unions協会
Tel: 0161 832 3694; Web: www.abcul.coop
イングランド、スコットランド、ウェールズのCredit Unionsに関する情報。
CATでも質問や相談に応じている。
訳注:
- 原題を直訳すると「倫理的金融」だが、地球環境保護がテーマなのに、金融機関の不祥事に関する文書と紛らわしいと思われるので「環境倫理金融」と訳した。
- 勤労者が住宅を購入する為の組合組織の金融機関。日本の信用金庫に似た存在。
- Credit Unionsの定訳は信用組合だが、ここで紹介されている姿は現在の日本の信用組合とはやや異なるので、原語をそのまま表記する。
文書全体に関する注意:
- この文書は英国の事情に基づいて記されている。関係団体等の連絡先も英国のものである。
- 団体名や固有名詞の日本語訳は試みに付したものであり、各団体や関係者の確認は経ていない。
Copyright (c) 1995-2007 Centre for Alternative Technology