循環型社会の実現性 
IS ZERO WASTE POSSIBLE?
原著作者 CAT's free information service
日本語訳 CAT普及協会
日本語訳に関する連絡先 infodesk@cat.or.jp
印刷用PDF版 A4 4ページ

この文書は、Melissa HarveyによりCATの会員向け機関誌「クリーンスレート」に発表されたものである。CATの会員制事業についてはwww.cat.org.uk/membershipを参照されたい。

訳注: この文書の内容は英国の事情に基づいている。


循環型社会の実現性

「クリーンスレート」の最新刊に於てCATのボランティア Bryn Fogden は、循環型社会の実現に向けた貴重な体験について記した。それは彼の日常の買物に関するものであり、歯磨の自作にまで言及している。しかし、生活に追われる一般家庭に於てはどうだろうか。

Green Alliance(グリーン同盟)による「英国に於ける循環型社会」とEconomic and Social Research Council(経済社会研究委員会)による「消費:減量、再利用、再生」と言う二つの報告は英国の廃棄物問題に触れており、各地方に於ける循環型社会の実現への取り組みについても着目している。そして、強力な廃棄物マネジメントや、生産から消費に至る仕組の変革など、循環型社会の実現に向けた重要な課題を挙げている。

ゴミ問題とは

廃棄物に関する第一の問題は、処分場所が残り少なくなっている事である。英国の廃棄物発生量は増え続けており、その内の75%が埋立処分されているが、その用地は満杯に近付いている。但し、これは英国内で発生する廃棄物の話であり、更に大量の輸入物資から変じた廃棄物がこれに加わる。

もう一つの問題は、まだ価値のある資源を無駄に処分している事である。棄てられる殆どの物資は再利用或いは再加工が可能である。プラスチックや金属などは非再生可能資源から作られるが、リサイクルすれば資源消費そのものと生産に要するエネルギーを節約できる。廃棄物問題は個人の生活にも密接に関わっており、英国では一人当たり年間424ポンド分の食糧が口に入る事なく廃棄されている。

循環型社会の意味

循環型社会の根元的な意味は、廃棄物の埋立を一切行わない事である。ニュージーランドや英国のBathなど、幾つかの国や地方自治体では実際に廃棄物ゼロを目標としている。廃棄物を一切出さない事が本当に実現可能か否かは別として、それが廃棄物処理マネジメントの最終目標である事は確かである。

循環型社会の計画目標は、廃棄物の流れを、ゴミ収集−埋立と言う直線状ではなく、生産−流通−廃棄−再生と言う閉じた円とする事である。この循環の姿は、ある廃棄物は即ち次の生産の為の資源となる事から、「揺りかごから揺りかごまで(墓場までではない)」手法と呼ばれる事もある。単純で解り易い例として、食品の廃棄物は醗酵させて堆肥とし、農地に戻して新しい食品の原料とする事ができる。紙、ガラス、金属、プラスチックなどについてもこの循環が成り立つ。

リサイクルは十分に行われているか

廃棄物を全く出さない為の各種の手法は何れも、リサイクルのみでは不十分であり、総合的な廃棄物減量が必要であると唱えている。廃棄物減量に関する情報はリサイクルのそれに比べて少ないが、その理由の一つとして、廃棄物減量は効果が見えにくく、また消費者にあっては過剰包装の商品に代わる選択肢が少ないと言う事情がある。先述の研究報告では、廃棄物発生量の削減の為の、製品が陳列棚に並ぶ以前からの「ゴミ無しデザイン」の必要性を指摘している。また同時に、生産原料の削減や種類の見直し、経済の視点を製造から流通やリサイクル活動に移す事も必要と指摘している。

ゴミ発電

ゴミを焼却する際に発生する熱による発電は、廃棄物マネジメントの一つの手段である。しかし、ダイオキシン、有害金属物質の発生と言う危険性もある。WRAP*1は、汚染やエネルギー消費の観点から、殆ど全ての場合に於て焼却よりもリサイクルの方が好ましく、焼却はリサイクル不可能な廃棄物にのみ用いるべきであると報告している。循環型社会の実現手法の殆どは、必然的に100%のリサイクルを目標としているが、中にはゴミ発電を許容する手法もある。

英国の選択肢

他のヨーロッパ諸国に比べて、現在の所、英国のリサイクルのレベルは低い。例えば、オランダでは地方自治体が処理する廃棄物の23%がリサイクルされている。英国のBathでは、2010年までに廃棄物の50%をリサイクルする事を暫定目標とし、現在では37%を達成しており、英国で最高の水準である。しかし、世界には他にも有効に機能している方策が数多くあり、場所によっては80%を達成している(例えば日本の徳島県勝浦郡上勝町)。具体的方策としては、埋立処理への高い課税や、家庭ゴミへの処理手数料賦課、回収事業の充実、再生の困難な廃棄物への課税、再生可能廃棄物の埋立禁止などがある。

廃棄物再生の程度を高める為には、英国もこれらの施策を模索する必要がある。また、製造業者に遡った廃棄物発生の抑制、低消費を原則とする経済体制への移行、と言った斬新な改革も必要である。そうする事によって整った機序が成り立ち、「廃棄物革命」が達成される。

参考情報

“Consumption: reducing, reusing and recycling”(消費:減量、再利用、再生)
2007 report from the ESRC(Economic and Social Research Council/経済社会研究委員会)
www.esrcsocietytoday.ac.uk

“A Zero Waste UK”(英国に於ける循環型社会)

2006 Report from the Green Alliance(グリーン同盟)
www.green-alliance.org.uk/uploadedFiles/Publications/AZeroWasteUK.pdf

“Environmental benefits of recycling”
Report published 2006 by WRAP(Waste?& Resources Action Programme).
www.wrap.org.uk

Recycle Now
For advice and information on recycling
www.recyclenow.com

CATでは更に詳細な問い合わせに応じている。



*1 訳注: Waste & Resources Action Programme 廃棄物・資源行動プログラム(団体名) http://www.wrap.org.uk/


文書全体に関する注意:
  • この文書は英国の事情に基づいて記されている。関係団体等の連絡先も英国のものである。
  • 団体名や固有名詞の日本語訳は試みに付したもの(先行翻訳事例に倣ったものもある)であり、各団体や関係者の確認は経ていない。

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