二酸化炭素計算機とエコフットプリント
Carbon Calculators and Ecological Footprints
原著作者 CAT's free information service
日本語訳 CAT普及協会
日本語訳に関する連絡先 infodesk@cat.or.jp
印刷用PDF版 A4 4ページ

二酸化炭素計算機

 人の生活に伴って排出される二酸化炭素は気候変動の原因となる。二酸化炭素計算機は、個人の二酸化炭素排出量を推計する仮想的な計算機である。二酸化炭素計算機の実際の使い方は、生活様式に関する質問に答えると言うものである。例えば、暖房の方法や熱源、移動手段、食生活などの質問が出される。そして、回答者の生活のどの部分が最も多く二酸化炭素を排出しているか、即ち改善すべき点を診断してくれる。
 二酸化炭素計算機は、同時に、環境に優しい生活様式の重要性を教えてくれる。一般に、個人の排出する二酸化炭素排出量は年間2.5トン以内が目標と言われる。これは、地球が許容し得る二酸化炭素の総量を人口60億で均等割にした値であり、現実的な目標と言える。
 二酸化炭素計算機の種類によっては、日常生活で使用する工業製品やサービスの生産に要する間接的な二酸化炭素排出も考慮に入れている。例えば、自動車を頻繁に運転する人の場合、車が排出する二酸化炭素のみならず、道路の建設や維持に伴って排出される二酸化炭素にも責任がある。また、学校や病院など、誰もが共通に利用する設備やサービスの整備、提供の為に要する二酸化炭素排出もある。これは「基盤負荷(infrastructure share)」と呼んでいる。直接的な二酸化炭素排出の低減を達成できたなら、次はこれら間接的な排出の低減に取り組まなくてはならない。個人が基盤負荷の低減に努めると言う事は、国の主権者として政府に対してより環境に配慮した政策を促す事を意味する。
 CATでは、近日、独自の二酸化炭素計算機the CAT Carbon Gym (www.cat.org.uk/carbongym)を提供する予定である。最新のデータと診断基準により、間接的二酸化炭素排出や基盤負荷の適正な負担を織り込んでいる。このサイトでは、汚染を抑える為の最新の助言も提供する。またCATでは、気候変動に着目した携帯電話用の二酸化炭素計算機も開発した。80010番で'climate'と入力すればダウンロードできる。
 the CAT Carbon Gymについては、体験版をCD-ROMで配布している。この体験版は、子供を対象に制作したもので、多くのアニメーションと若年者向けの解説を含んでいる。
 The Resurgence試算機(www.resurgence.org/carboncalculator)は、詳細さに優れている。回答に当たっては、年間の光熱費を調べておく必要があり、時間のかかる作業になる。しかし、診断結果は詳細なもので、生活様式のほんの一部を僅かに改善した場合の効果まで予測してくれる。間接的二酸化炭素排出量については、回答者の年収から自動的に算出する様になっている。

エコフットプリント

 エコフットプリントは、人の暮らしが地球環境に及ぼす影響を説明するもう一つの方法である。人の暮らしに必要なあらゆる物(エネルギー、食料、住居、交通、消費物資)の生産と廃棄の為に要する土地の広さを示すものである。実際には、地球と言う星の数で表される。この星の数とは、回答者自信と同じ生活を全ての人類が送った場合に生じる影響を受容し、分解処理する為に必要な地球環境そのものの合計サイズである。例えば、もし全ての人類が英国の平均的な生活を送るなら、排出される二酸化炭素排出を中和し、食料を賄い、廃棄物を吸収する為には、地球が三個必要である。目標値は、勿論、地球一個であり、'one planet person'となる事を目指さなくてはならない。
ecofootprintgraph.jpg(18123 byte)  エコフットプリントは、「グローバルヘクタール」と言う値でも説明される。一人当たり1.9ヘクタールが適正な値である。しかし現実は、英国の一人当たりのグローバルヘクタールは5.3に昇る。グラフ(WWFより引用)がその内訳である。
 エコフットプリントは全てを計算に入れられるわけではない。特殊な資源の消費や文化・芸術・社会的な活動から生じる環境汚染は算定できない。しかし、人間が地球環境に与える影響の概要を把握できる事は確かであり、汚染を低減する為に先ず何をすべきかを判断する際の頼りとなり得る。
 エコフットプリントの計算は二つのウェブサイトで行える。www.myfootprint.orgでは、15の質問に答えるとグローバルヘクタールで回答を得られる。個人、学校、企業それぞれに向けたアドバイスも提供している。
 www.ecologicalfootprint.comでは、簡単な質問に答えるだけで、二酸化炭素排出量とエコフットプリントの両方を答えてくれて、双方の関係を知る事ができる。

地域別のエコフットプリント

 特定の都市、地方、国に関する詳細なエコフットプリントの研究も行われており、行政当局には、その地域のどの部分が環境に負荷を与えており、どの部分に改善の余地があるかを知る為の参考となっている。ヨーク、リバプール、ロンドンの各市は、詳細はエコフットプリント研究を既に行っている。ウェールズ、Gwyneddについては、Stockholm環境研究所(SEI)、Bangor大学、カーディフ大学が共同して研究を進めている。
 WWFのLiving Planet Report (www.panda.org/livingplanet)は、エコフットプリントを用いて人類の欲求と世界全体の生態系との関係を説明している。The Global Footprint Network (www.footprintnetwork.org)は世界全体と国レベルのエコフットプリントに関する情報を提供している。

教育に於けるエコフットプリント

 エコフットプリントは、教育の場に於てもとても有効な教材である。ゲーム、映像、討論、図工などの形で使えば、子供が地球環境問題や社会問題を考える為の良い手助けとなる。
 CATでは、7歳から18歳までの児童・生徒を対象として、エコフットプリントを活用した様々な活動の企画を行っている。エコフットプリント教育の為のWhere's the Impact?と名付けた教材パッケージは、5.95ポンドで通信販売しており、コピー配布も可能である。

その他の参考情報

Sharing Nature's Interest (McLaren et al 1998)
エコフットプリント解析手法の優れた解説書。

www.RedefiningProgress.org/ecologicalfootprint
エコフットプリントに関する情報が豊富。

ヨークやリバプールを始めとする、SEIによる一連のエコフットプリント研究。www.york.ac.uk/inst/sei/IS/reports.htmlにて公開。

ロンドンに関する詳細な研究報告はwww.citylimitslondon.comで閲覧できる。
ウェールズのエコフットプリント
www.walesfootprint.org



この文書全体に関する訳注:
この文書は英国の事情に基づいて記されている。関係機関の連絡先等も英国のものである。PDF版には、このHTML版には無い節(航空機利用に関するもの)がある(理由不明)。


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