過去20年、有毒汚染物質排出の軽減はある程度進んで来たが、自動車から排出される二酸化炭素の減少は遅れている。エンジンの燃料効率は向上したが、安全装置、空調装置、パワーステアリング(電動ハンドル)などの普及により全体の燃料所要量が増加している為である。
しかし、最近になって自動車製造業界では、二酸化炭素排出の減少を目指し、燃費を一定水準に抑える申し合わせを行った。
自動車運転による二酸化炭素排出を軽減する為に、個人でできる事は決して少なくない。最も効果的なのは可能な限り自動車の使用を止め、徒歩、自転車、公共交通機関を利用する事である。次に、自動車の正しい保守、十分な運転計画、省エネ運転の励行によっても排出は目に見えて減るものである。また、車両の選択も二酸化炭素排出量に大きく影響する。
自動車利用回数の低減
短距離の自動車利用は、燃費の点で効率が極めて悪い。エンジンは始動して最初の数マイルの間により多くの燃料を消費するし、触媒装置も十分に機能するまでには若干の時間を要するからである。短距離なら徒歩か自転車にすべきである。
正しい保守
エンジンの点検、二週間に一度以上のタイヤ空気圧調整など、自動車を正しく保守したい。タイヤ空気圧が正しくないと、燃費は如実に悪化する。また、トランク内や屋根上キャリアなどの余計な荷物は意外な負荷となるので、必要がない限り降ろす或いは取り外すべきである。
運転計画
出発の前に十分に計画を立てておけば、道に迷って燃料を浪費する事はない。また、自動車で外出するなら、一度で可能な限り多くの用を足す様に予定を立てるべきである。
エコドライブ
前方の状況に注意し、スムーズな運転を心掛ける事。急加速、急制動、過度なエンジン回転(ディーゼル車で2000rpm、ガソリン車で2500rpmが上限)は控える事。乱暴な加減速は燃料消費を30パーセントも増加させ、更に車体の損耗を招く。
また、速度を抑える事。時速70マイル(112キロ)で走る時の燃料消費は、時速50マイル(80キロ)の時より25パーセントも増加する。85マイル(136キロ)なら70マイルの25パーセント増しである。排気ガスが最も少なくて済むのは時速50〜60マイル(80〜96キロ)で、60マイルを超えると環境汚染の度が増す。
エアコンも燃料消費の増加を招くので、なるべく使用を控える。可能な場所では爽やかな風を取り入れ、環境汚染と燃料消費を軽減しよう。
エンジンのアイドリングは、燃料を消費するし損耗も招くので、停車が2分以上になると見込まれる場合はエンジンを止める。始動時の暖機運転も不要である。エンジンを始動したら直ちに出発する方が良い。
時間に余裕を持つべきである。慌てた気分の運転は不安定で効率も悪い。リラックスして、旅を楽しみたい。
信号には従おう。信号が赤に変わる直前に駆け抜けても、次の信号もその次の信号も赤で、結局停止させられる事になる。安定した速度で運転していれば、次の信号に到達する頃に丁度緑になる。
高速道路では3〜4台前の車の様子にも注意を払い、直前の車とは十分な距離を取る事。前の車がブレーキをかけたら、すぐにアクセルから足を離して車間距離を維持する。車の流れが再加速に向かう可能性もあり、前の車に接近して急制動するよりも減速の度合が僅かで済む。こうする事で、一台の急制動で後続の車が停止に近い程の減速を強いられる団子現象を防ぐ事ができる。
自動車購入
燃費の良い自動車を選ぼう。同じサイズで同じ燃料を使っても、車種によって多い場合には45パーセントもの燃費の差がある。ETAの「自動車購入ガイド」には、全ての市販車の性能が記載されている。今日では、自動車の消費税は二酸化炭素排出量によって変わるので、汚染の少ない車程支出も少なくて済む。
車のサイズは、家族全員で行くドライブを想定するのではなく、日常の利用に必要なだけの、なるべく小さな物を選ぶべきである。大きな車が必要なのは年間通算で2週間程度であり、その時には借りて済ませ、残りの50週間は小型の車を利用する方が経済的で環境に優しい。サイズ選定については、エンジンと車体全体の両方に注意が必要である。これらの両方とも環境汚染に関連している。一般に、エンジンは、大きく高出力な程二酸化炭素排出も多い。
自動変速(オートマチック)の車は、一般的傾向として、手動変速(マニュアル)に比べてエンジンの負担が大きく、従って燃料消費量が多い。しかし、技術の発展により、この差は縮まっている。
車の所有については、複数台を所有するよりも、家族で融通し合う事を考えるべきである。
新車
冷蔵庫には省エネラベルが表示されているが、自動車業界でも、今日では、環境影響ラベルを表示し、消費者は二酸化炭素排出量を比較して選定できる様になっている。等級は、A(二酸化炭素排出量最少)からG(同最多)になっている。環境影響ラベルには、自動車税や燃費に関する情報も記載されている。環境影響ラベルの見本は、交通省のウェブサイトで確認できる。 www.dft.gov.uk/pgr/roads/environment/exampleoftheafenergylabelforcars
The Environmental Transport Associationは、「自動車購入ガイド」の刊行の他に、そのウェブサイトで、自動車支出シミュレーターも提供している。
www.vcacarfueldata.org.ukでは、新車の燃費や排気ガスに関する詳しい情報を提供している。
中古車
本当に必要な場合以外は、新車の購入は控えるべきである。中古車を利用する事は、新車の製造に要するエネルギーと資源の消費や環境汚染の回避を意味する。しかし、新しい車の方が排気ガスが少なく、省エネルギー性能に優れているのも事実である。 中古車はなるべく新しい方が良い。VCAのデータによれば、新車50台の1キロ当たりの環境汚染は、1970年製の車一台と同じである。
古い車は、保守を怠ると道路上最悪の汚染源になりかねない。The Environmental Transport Association (ETA) は、あらゆる中古車の検査サービスを実施している。
購入の際は、経歴の明らかな車を選びたい。車の保守の為に、車の市場価値を上回る程の支出をする事も十分経済的である。重要な事は、完全に動作する事である。その信頼が失われたなら、その車は売却すべきである。
ディーゼルかガソリンか
ディーゼル車の二酸化炭素、一酸化炭素、炭化水素の排出量は、同じ距離当たりでガソリン車より少ない。一方、都市部で問題視される粒子状物質、揮発性有機化合物、窒素酸化物の排出は多い。都市部を走る機会が多いなら、ガソリン車がより良い選択と言える。
廃棄処分
自動車の寿命が尽きたた時、処分の依頼先は認可を得た業者でなくてはならない。そして廃棄済証を受け取る事。それは、ブレーキフルードやバッテリーなども含めて正しい手順で処分された事の証明である。
その他の参考情報
VCA自動車燃費資料
www.vcacarfueldata.org.uk
Environmental Transport Association
Tel: 0800 212 810; web: www.eta.co.uk
保険と修理サービスを提供する。サステーナブルな交通システムの提唱も行っている。ウェブサイトには、グリーンドライブ、自動車購入ガイド、自動車支出シミュレーターなどがある。CATの会員には割引特典が与えられる。
Low Carbon Vehicle Partnership
www.lowcvp.org.uk
訳注:原文では下位ページへのリンクになっているが、既にページ構造が変更されているので、トップページへのリンクとした。
自動車と燃料関係の産官学と環境保護団体の共同事業。研究報告のページで二酸化炭素排出の低減に関する先端技術情報が公開されている。
この文書全体に関する訳注:
この文書は英国の事情に基づいて記されている。関係機関の連絡先等も英国のものである。
この文書は英国の事情に基づいて記されている。関係機関の連絡先等も英国のものである。
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